超短文7題 1
※memoログ。1−1〜1−7まで。









超短文7題1−1 転寝


「あれ、門田くん?…臨也寝てるの?」
「…ああ寝てるぜ」
「へえー、寝てるとまるで普通だねぇ」
「普通か?」
「そりゃ見ためいいから鑑賞には値するけど。ほら、すっごく無防備でまるで普通の人間だよ」
「…そういうもんか?」
「それはそうと、門田くん」

そこでいったん言葉を切って新羅は笑って後ろを指差す。

「そろそろ返さないと静雄が暴れだしそうだ」



※『猛獣』設定で来神時代。















超短文7題1−2 おそろい


「あ、そうだ。これあげるよ」
「なにこれ」
「見たまんま、リボンだけど」
「意味わかんないよ?」
「この前静雄に首輪でもつけたいって言ってただろ」
「あれは自分のだって主張したいんであって、そういう意味じゃないよ」
「もちろんわかってるよ。だから、はい」
「………」



「なんなんだ、あれ」
「おそろいのリボン」
「…」
「ホントにつけるんだから、臨也も案外可愛いよね」
「………」

にっこり笑って言う新羅に呆れた眼差しを注いでから。
門田は手首におそろいのピンクのリボンを巻いた静雄と臨也の姿に視線を戻し、深いため息をついた。



※『猛獣』設定で来神時代。はずかしくないの君たち。















超短文7題1−3 相合傘


「あ、ドタチン俺も入れてー」
「…男同士で相合傘は嫌なんだがな」
「いいじゃん。俺が濡れたらかわいそうでしょ?」
「自分で言うな」
「でも入れてくれる優しいドタチンがすきー」
「……おい、抱きつくな。平和島が睨んでるから止めろ」
「やーだ」


「臨也と門田くんって結構仲いいよねぇ」
「………」
「でも臨也が傘忘れるなんて珍しいよね」
「………」


「大体傘なら平和島のだって良いだろうが」
「だってシズちゃん俺の傘壊したんだもん。謝るまでぜーったい許さない」
「…平和島も災難だな」



※雨と喧嘩と相合傘。たぶん『猛獣』設定で来神時代。















超短文7題1−4 夜這い


「手前なにしてやがる」
「あ、起きちゃったか」
「どこから入った…」
「もちろん玄関からだよ」
「…俺は手前に鍵をやった覚えはねぇんだがな」
「うん俺も貰った覚えないよ」

にっこり笑う臨也に悪びれた様子はない。というか、確信犯的なあくどい笑みを浮かべている。

「合鍵はこの前勝手に作ったんだ。それにしてもシズちゃんお疲れだね。全然起きないからこのまま襲っちゃおうかと思ったよ」
「よしとりあえず死ね」
「君が死んでよ。あ、でもその前にしよう」
「あァ?」
「だーかーらー、しようって言ってるの!俺今すっごくそういう気分なんだよね」
「…せめて電話してから来い」
「えー…だって夜這いしてみたかったんだもん」
「……手前実は馬鹿だろ」



※夜這いというより単なる襲い受け。















超短文7題1−5 お風呂


「…シズちゃんちの風呂せまい」
「文句言うなら入るな」
「だって風呂入れないと帰れないよ」
「………」
「ねえ、せまいから出てってくれない?」
「俺が先に入ってたんだ」
「俺のことどろどろにしたのは君だよシズちゃん」
「………うぜぇ」

唸る静雄を臨也は鼻で笑う。

「とにかくこのままじゃ帰れないから洗わせてよ」
「…ちっ、わかった」
「じゃ、シズちゃんは浴槽にいてね。なんだったらあっち向いててよ」
「ちっ」

舌打ちを繰り返し視線を逸らす静雄に、臨也は今度は声を立てて笑った。



※静雄の家(アパート。風呂とトイレは別の1Kだといい。)のバスルームにて。















超短文7題1−6 怪我


「ッ」
「何してやがんだ」
「…煩いなぁ。シズちゃんには関係ないよ」
「見せてみろ」
「遠慮する」
「臨也」
「知らない」
「見せろ。でないと」
「何する気さこの変態」
「どうやら死にてぇらしいなぁ臨也くんよぉ」
「…君たちいつまでもじゃれてないで。静雄は心配なら威嚇しない。臨也はさっさと手を見せて」

新羅の言葉に二人はぱっと離れた。

「…ちっ」
「ちょっと紙で切っただけだから平気だよ」

片方は気まずそうに舌打ちし、片方は興味なさ気に血の出ている手を振る。

「小さな傷だからって甘く見ない。ほらさっさと見せる」
「…はーい」
「ああ、結構深いね。気をつけないとダメだよ臨也」
「…わかったよ」
「手前は不注意だからな。怪我しねぇように気をつけろ」
「「君にだけは言われたくない(と思うな)」」

二人の声が重なって、静雄は自分の行動を省みてもう一度舌打ちして視線を逸らした。



※(いつも怪我させてる)自分のことは棚上げ。















超短文7題1−7 背中合わせ


「ねぇ、シズちゃん」
「…あァ?」
「この状況ってどういうんだろうねぇ」
「……手前が仕組んだ、わけじゃねぇのか」
「俺はやるんだったらもっとうまく立ち回るよ。少なくとも自分は巻き込まれないところで高みの見物って方が俺らしいでしょ」
「確かにそうだな」
「ははっ、とりあえず今だけ休戦しようか」
「…手前と共同戦線はる気はねぇ」
「もちろん。俺だってシズちゃんだけは御免だよ」
「ちっ、仕方ねえ。こいつらぶっ飛ばしてから殺してやるから覚悟しとけ」
「お手柔らかにー」

ケラケラ笑う臨也に静雄がもう一度舌打ちして。
そして、合わせていた背が、離れた。



※追われて囲まれて一時休戦。来神時代かも。