「たまにはこういうのも悪くないか」
※同居パラレル。
















――あー…スープの、匂いだ。

そう思いながら、臨也はゆっくりと目を開けた。
ちらりと見た時計はの短針は4の文字を指している。

「結構寝たかな」

まだ眠気は去っていないが、そろそろ起きるべきだろう。
そう判断し、臨也は身を起こそうとソファの背に手を掛けた。
のろのろと起き上がり、辺りを見回す。

「…なんで、スープ…?」

てっきり夢の出来事だと思っていた臨也は首を捻った。
いい匂いがキッチンの方から漂ってきている。
んー…?と、寝ぼけ気味の頭で考えて。
掛けられていたらしいブランケットが落ちそうになるのを手で押さえて、
「ああ、シズちゃんかぁ」
と納得したように呟いた。
どうやら静雄が帰ってきているらしい。
今日は早いと言っていただろうか?
そう思うが、帰ってきていることに違いはないかと、ひとつ欠伸をして思考を中断する。

「鶏がら、だよねぇ」

珍しいこともあるものだ。
決して静雄は料理ができないわけではないが、凝った料理は作らない。
スープのような微妙に手間のかかるものは論外だったはずだ。
珍しい。と思いながら、臨也はブランケットをソファの背に掛け、立ち上がる。
目的地は言うまでもなくキッチンだ。

「シズちゃん、おかえりー」
「お、目ぇ醒めたのか」
「うん」

いー匂いだねぇ、と呟く臨也に、静雄はまだ食えねぇぞと返す。

「知ってるよ。それに、それ、夕食でしょ?」
「…まあな」
「珍しいねぇ」

その臨也の言葉に、静雄は頬を掻いて苦笑した。
「…………たまには、な」
手前、気持ち良さそうに爆睡してたしな。
悪くはないだろ、と言って照れ隠しなのか、鍋の中身をぐるぐるとおたまでかき回す。

――そんなにかき回したら、シズちゃんの力じゃ具が崩れちゃうと思うんだけど…。

口には出さないがそう思い、臨也は話題の転換を図る。
「何のスープ?」
問うと、困ったように眉間に皺が寄せられ。
スープを見つたままの静雄が「何って…」と首を捻った。

「鶏貰ったから、そいつでダシとって………適当に味付けて野菜ぶち込んだやつ」
「ふうん」

最初から料理名など出てくるとは思っていない臨也は気にした様子もなく相槌を打ち、鍋の中を覗き込む。
薄く色づいた透明のスープに色とりどりの野菜。
いい匂いだ。コンソメではなく中華スープに近い。
うん。と頷いて、臨也は満足そうに笑う。

「晩御飯が楽しみだよ」
「おう、任せとけ」

臨也の言葉に。
静雄も嬉しそうに笑ってそう答えるのだった。












※たまにはシズちゃんもご飯を作ります。
…もはや(付き合ってすらいないのに)夫婦みたいな二人。