池袋の騒動=たぶん世界の平和
※『猛獣』設定。















「へ?」

新羅の問いかけに、臨也は間抜けな声を出した。
さらに首を傾け怪訝な顔をする。

「セカイセイフク?」

片言での鸚鵡返しはどこか馬鹿にする響きさえある。

「そう。君と静雄が組めば、それくらいできそうじゃない?」

言えば、きょとりと瞬く目。
不思議そうな表情は小動物のようだが、これはそんな可愛らしい生き物ではない。
それが分かっているからこその新羅の問いは、どうやら臨也には酷く意外なものだったらしい。

「なんで俺がそんなことしなきゃいけないのさ」

ありありと面倒だと示す表情は、すでに話題への興味を失っているらしく。
散漫に動かされた視線が、戻ってきた静雄の姿を捉えふわりと緩んだ。

「シズちゃん新羅が変なこと言うんだよ」
「あ?なに言われたんだ?」

ひょいと臨也に缶ビールを手渡して、自身は臨也の持っていたリキュールを取り上げて口に含む。
そのやり取りそのものには何の疑問もないのか、臨也は先程の新羅の言葉を静雄に告げる。

「君ら二人なら世界征服が出来そうだねって。どう思う?」
「してぇのか?」
「まさか!」

ケラケラ笑って臨也は隣に座る静雄の膝に手をかけて。
静雄はそんな臨也を膝に抱き上げて懐く猫のような彼を撫でる。
仲睦まじくて大変宜しいですね。
投げ遣りにそう思った新羅に、静雄が視線を向けてきた。

「俺もこいつも、そんな面倒なことはしねぇよ」

100%心の底から本気で言われた言葉に、新羅は笑う。
それは良かった。
これでとりあえず世界は安泰だ、そう思った矢先。

「だってさぁ、後の管理とか面倒じゃん?どうせなら他の人にやらせて自分は裏で糸を引くのが理想だよねぇ」

くつくつ笑って臨也がそう言う。
どう思うかと問われた静雄が首を振った。

「俺はどっちにしろいらねぇよ」
「じゃ、俺もいらない」

きゅうっと抱きついた幼馴染を抱き返して、静雄が新羅に向かって愉しげに笑う。

「これの面倒は俺が見とくから安心しとけ」

厄介ごとは池袋から出さねぇよ。と告げる声は思いのほか真剣で、なのに甘く。
新羅は「ならよろしく」とだけ言うにとどめ、いちゃつく二人から目を逸らした。












※酔っ払いと世界征服の話。
もちろん臨也と静雄単体だけでは世界征服は無理だろうけど、臨也の裏の繋がりと協力すれば充分世界を狙えるよねって思った新羅さん。新羅は静雄よりは多少詳しく臨也の裏事情を知ってます。とりあえず臨也さんが池袋中心に活動する限りは世界は安泰だという話。