弱り目に祟り目?
※Rー15。

































ケガをした。
別に、ちょっと酷いくらいで再起不能になるほどのケガじゃない。
なのに、なぜか。
ケガをさせた張本人に甲斐甲斐しく世話をされる状況に陥って。
俺は正直混乱していた。
そもそも、だ。
俺がシズちゃんとの喧嘩でケガをするのは珍しいことじゃないし、ちょっといつもより酷かったぐらいでシズちゃんが気にやむなんて思いもしなかったわけだ。
…まあ、何というかいつもみたいに打撲の酷いのとか骨折とかそんなんじゃなくって、見た目にグロテスクな状態にはなったんだけど。
出血量と鉄片に抉られてぐちゃぐちゃになった傷に顔を青くしたシズちゃんに新羅のマンションに連れて行かれて、治療してもらって。
安静にしているように、との新羅の一言がたぶん発端。
なぜか俺はシズちゃんの家に連行されて、シズちゃんに何から何まで世話されるという屈辱的状況に陥っている訳なのだ。
しかも───






「や…ぁ」

シズちゃんの指が触れる何処もかしこも熱過ぎて。
気が狂いそうだと、熱に浮かされた頭の隅でそう思う。

「気持ちいいか?」
「…ッ………ふ、ぅ」

そりゃ、直接触られれば気持ちいいに決まってる。
ぐちぐちと粘っこい水音をさせて擦られて。
自分でするのとは違うリズムにすっかり翻弄されていた。

「ッ!」

太股にシズちゃんの指がかかって、思わず身体を強ばらせる。
包帯に覆われたそこは、その下にいまだ生乾きの傷があって。
鎮痛剤の効果が薄いのか、さっきからやけにズキズキと痛んでいた。

「…痛むか?」

そっと、シズちゃんの手がそこを撫でてから離れる。
うん。すっごく痛い。今の絶対わざとだろ?そうだろ?
涙目になって睨むと、悪い、と呟く。
ならやるなよ。

「シズちゃん、ゆ、び…」
「ああ、わかった」

強請る俺に、シズちゃんが目を瞬いて、それから頷いた。
ちゅっと音を立てて目元にキスされて。
止まっていた手の動きが再開される。

「ん、ん…」

ダイレクトな刺激に痛みが僅かに薄れていく。
はふ、と熱のこもった息を吐き出して。
俺は、なんでこんなことになったんだっけと考えた。

「は、ぅ…ん…ッ……あ、ぁ…しずちゃ、ん」
「臨也、痛かったら言えよ?」
「ん」

こくこく頷いてシズちゃんのバーテン服にしがみつく。
うん、ホント、何でこんなことになってるんだ俺。
だってさっきまで普通に話してたのに、さ。

「臨也」

言葉と共に顎を掬われて、柔らかなキスが唇に落とされる。
何度も何度も名前を呼ばれて、顔中キスされて。
なんでそんな声出すのさ、と思った。
だって、これって俺の痛みを紛らわすため、なんでしょ?
あんまりたくさん薬を使うと良くないからって、そう言ったのはシズちゃんだよ?
…ああクソ…熱のせいで頭働いてない、な。ええ、と…なんだっけ…?
っていうか、熱いし、気持ち、よすぎて、頭沸騰しそう。
大きな手のひらに包まれて、くびれとか先端とかを意外に器用な指に丹念にいじられて、ぞくぞくと悪寒が走った。
思考がまとまらなくて、天敵にすがりついて喘ぐ自分の滑稽さを笑う余裕もない。

「あっ……ひっ…ぁ…も、でる」
「いいぜ、出せよ」
「て、はなしてっ」

とろとろと白濁混じりの液を吹きこぼす俺のそこをシズちゃんの指の腹が少し乱暴に擦って。
頭の中が、電気がスパークするみたいに、真っ白になって。

「あ、あっ…ッ…くぅ……ぁぁああッ」

我慢なんてできなくて。
俺はシズちゃんの手のひらに思いっ切りぶちまけてしまっていた。
チクショウ…なんかすっごく屈辱だ。

「…しずちゃん」
「なんだ」
「こういうのって…さいてーだと、おもう」
「…かもな」

俺の呟くみたいな文句に笑いを含んだ声が応じて。
もう何度目かもわからないキスが降ってくる。
人が熱で弱ってるのにつけ込んで。
卑怯だよシズちゃん。

「臨也」

そんな優しい声で呼ぶのは反則だよ。
俺と君って、天敵だろ?会えば殺し合う仲だろ?

「臨也」
「うん」

ああもうホント、なに考えてんの君。
そんな大切なもの見るみたいな目で見るなよ。こっちまでおかしくなりそうだ。

「寝ていいぞ」
「ねむ…くは」

ない、と言おうとしたけど、傷からの発熱に射精の疲労が加わって。傷の痛みを凌駕する眠気が頭に霞をかけていく。

「しずちゃん」
「なんだ」
「きみ、ばかだろ…」
「………かもな」

ああ嫌だ。そんな優しい声出すなんて。俺の知ってるシズちゃんはどこに行っちゃったのさ。気持ち悪い。最悪だ。
でも、抱きしめてくる腕は安心感があって心地よくて。
俺は疲労しきった身体をシズちゃんに預けて、眠りに落ちた。












※弱ってるところにつけ込まれる話。

シズ→イザで、弱ってる臨也に我慢できなくなって適当な理由を付けて触る静雄さんと熱で頭が働いてない臨也さん。
この後、たぶん傷が完治するまでに絆されることになると思います。