「平和な日常ってこういうのを言うのかもね」
※同居パラレル。静+臨。糖分増量中。















暖かな朝の日差し。
まだ春には遠い日差しだが、穏やかな光が大地に注がれていて。
窓からも入り込むそれにほんわりと暖かな気分になって、臨也は上機嫌で朝食の支度をしていた。

「あれ?シズちゃんおはよう」

視界の端に映った相手を振り返り、早いね、と声をかけると「はよ」と小さく欠伸交じりの返事。
眠そうに目を瞬かせながら洗面台へと向かうのだろう静雄の姿に、臨也はくすりと笑う。

「平和っていいねぇ」

思ってもいないことを口にしてみて、グラスに牛乳を注ぐ。
しばらくして戻ってきた静雄にはいと差し出せば、彼は素直に礼を言って受け取った。
この生活に馴染んでからの日常は――池袋での喧嘩を除けば――至って平穏で。
多少の退屈を感じながらも、臨也はそれなりに人生を楽しんでいる。
それは、様々な事情が絡んだ結果臨也と同居などという事態に陥ってしまった静雄も同じなのだろう。
かつては決して見せることのなかった穏やかな眼差しを向けてくる彼に、臨也さえそれが当たり前になりつつあるのだ。

「…和食、か?」
「そうだけど、嫌だった?」
「いや、そうじゃねぇよ」

のそりと側まで歩いてこようとするのを「座ってていいよ」と制すると、「分かった」と素直にテーブルへ向かう。
もうほぼ仕度は終わっていた。
白いご飯に味噌汁、焼き魚――ちなみにサバの塩焼きだ――に水菜のおひたしとかぼちゃの煮つけ、あと漬物とか適当に。
和食なのは前日がフレンチトーストだったという理由で、それ以上の理由はない。
さっさと運んでわんこよろしく待機している同居人の前に並べていく。
自分のものも適当に並べ、向かい合わせの席に座って。

「召し上がれ」
「おう、いただきます」

いつも通りのやりとりをして、二人は朝食制覇に取りかかった。





「おいしい?」
「手前が作るもんでまずかったのってあったか?」

問えば逆に訊かれて、臨也はさあ?と首を傾げる。
まずいものを作った覚えはないが、料理に何らかのこだわりがあるわけでもない。
臨也にしてみればどうでもいいことだ。

「おいしいなら別にいいけどね」

もふもふと頬を膨らませて返事の代わりに一つ頷く静雄に、リスか君は?と思うが口には出さなかった。
行儀良く食べている相手を挑発する理由もないだろう。
そう考えて、臨也は小さく笑った。


「平和っていいねぇ」


今度の言葉は、心の底からのものだった。












※むしろ!シズイザより!甘いよ!(…付き合ってないですよ、この二人)