薬を盛ってみました☆
※R-15。襲い受け臨也さん。お互い恋愛感情なし。イザシズ気味なので注意!
































「て、めぇ…」

掠れた低い声とともにぎろりと睨まれて、臨也は心底楽しそうにたちの悪い笑みを浮かべた。
見下ろした視線の先、池袋最強と名高い喧嘩人形、平和島静雄がベッドに横たわっている。
着込んでいたバーテン服は半ば脱がされ、下はズボンどころか下着まで取り払われてしまった姿で睨まれても怖くもなんともない。
なんか色々視覚的に嫌だなあなどとのんきに考え、臨也は手にしていたナイフを仕舞った。とりあえず今は必要ない。
静雄の手首は鉄線で拘束されている。普段の彼ならばとっくに外してしまっていただろうが、今は無理だ。

「ちゃんと効いたみたいで良かったよ。足りなかったらどうしようかと心配してたんだよね」
「…なに、盛ったんだ」

訊いてはいるが、たぶん静雄にも分かっているはずだ。
臨也はぎしりと音を立てて自身もベッドに乗り上がる。
覗き込んだ彼を睨む静雄の目は、熱で潤んで目元はほんのりと赤く染まっていた。
ぎりと奥歯を噛み締める音に、苦笑する。

「しーずちゃん、大丈夫だよ。質は良いやつだし、まあ…量は普通だったら心臓に負担がかかるんじゃないかなってくらい使ったけどさ」
「だか、ら」
「もう想像ついてるでしょ?媚薬だよ、媚薬。所謂催淫剤ってやつ」
「…し、ね!」

嫌悪も顕わに忌々しそうに吐き捨てた静雄に、あははと臨也は声を立てて笑った。
さて、あとどれくらい効いているかなと考える。正直、あまり長い時間効果が続くとは思えなかった。
やるなら短期決戦だ。

「シズちゃん、俺さあひとつ疑問があってさ」
「………っ」
「それを解消したくてこんなことしてるんだよね」
「…や、めろっ」
「俺とシズちゃんって相性最悪だけどさ、身体の相性はどうなのかなーって…まあ、ホントちょっとした疑問なんだけど」

肌蹴られたわき腹をなぞって反応を愉しんでいた指を、下へずらして臨也は嘆息した。
大きいねぇなどと特になんの感慨もなく言えば、途切れ途切れの罵声が返る。
それを気にすることもなく、臨也はどうするかなと考えた。
好奇心を満たす方法は二つ。
ひとつは自分が静雄に突っ込む方だが、臨也は想像してから頭を振る。

「うーん…ないな。ないない」

萎える。無理。
静雄は顔だけならともかく、抱くには臨也の好みからはだいぶ外れる。
じゃあ逆しかないな。と頷き、自己完結した臨也はとりあえず目的達成のために行動を起こすことにした。

「…ところでシズちゃんって童貞?」
「あ…?」

下半身を弄られながら問われ、静雄が快楽と戸惑いと怒り、そんなもの全てをない交ぜにした目で見上げてくる。
この顔は悪くないかもねと胸中で笑って、臨也はもう一度問いかける。

「シズちゃんが童貞かって訊いたの。で?」
「…なんでっ、手前にんなこと、言わなきゃなんねぇんだッ…ッ」
「はいはい、了解。…意外だな、テレクラの取立てなんてしてるんだしそういう機会くらいあるんじゃないの?」
「…うるせ、ぇ…」

快楽ではない赤に染まった顔に答えを見出して、臨也は首を傾げた。
だが別になら止めるかなどという殊勝なことは考えていない。
むしろ嫌がらせになるかもと脳内で次の計画に繋げられないか計算している始末だ。

「…ま、とりあえず準備しようか」

独り言の体で呟き、器用に片手で服を脱ぐ。
その間ももう片方の手で静雄の熱を煽るのは忘れない。
わざとらしく音を立てて溢れた体液を擦り付ける動作に何度も息を詰めて耐えているのを冷めた目で眺め。
一応どちらの状況になっても良いように準備だけはしてきたしこのまま突っ込んでしまえばいいかと、臨也は静雄の上に乗り上げた。
多少サイズが大きすぎる気もするが、別に初めてではないのだから問題ないだろう。
楽観的に考えて、相手のそれを片手で支えたまま腰を下ろそうとして、

「っ!?」

何かが切れる鈍い音とともに、ほとんど間を置かず腕を引かれ臨也はベッドに叩きつけられた。
スプリングが悲鳴を上げるが、そんなことを気にしていられる状況ではない。
臨也を組み敷き見下ろす鋭い眼光に、あーあ、と臨也はぼやく。

「…もう復活とか、どんだけ化け物なのシズちゃん」
「うるせぇ」

引き千切った鉄線を床に放り投げ、静雄は臨也を組み敷いたまま掴んだ腕を締め上げる。
骨の軋む音と痛み。眉を顰め、だが臨也はあくまで冷静に静雄を観察していた。
体勢的に逃げることは難しい。ナイフを仕舞ったコートは少し遠い。ならばどうするか。
打開策を思案しつつ下から静雄の顔を眺めていた臨也は、あれ、と小さな声を上げた。
いつもならとっくに出ているはずの暴力が来ない。相手は苦しそうに息を吐きながら、熱に濁った目で自分を見下ろしている。
ああそうか、と得心した。

「なんだ、まだ効いてるんだ」

つ、と首筋をなぞると、静雄の身体がぶるりと震える。
だいぶ効果が薄れて動けるようにはなったが、抜け切るにはまだまだ時間がかかるのかもしれない。
ほくそ笑み、臨也は静雄の首に腕を回す。

「続き、しないの?」

そのままじゃ辛いだろうと。
くつくつと悦に入った笑いを漏らしての問いに、静雄は「手前あとで殺す」と低く唸る。
忙しなく肌をまさぐる指を感じながら、臨也は事後の算段について考え始めた。












※ありがちネタ。一回はやっておきたい襲い受けで誘い受け。精神的にはイザシズっぽい。