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※匿名さまリクエスト「シズイザですれ違いの喧嘩→ハッピーエンド」
続き物。




















とにかくちゃんと喧嘩せずに話し合うべきだよ、と新羅に諭されて。
静雄は新宿の臨也のマンションの前にいた。

「…あー…どうすっかな…」

正直入れてもらえるとは思えない。
なにより、一度へそを曲げた臨也は扱いが難しい。玄関を壊して入ろうものなら当分静雄と顔を合わせず逃げ回るくらいのことはするだろう。
そんなことになっては元も子もないのだ。

「……」

見上げる先は、臨也の部屋の窓だ。
だが、光を反射して中を窺うことはかないそうにない。

「…どうすっか」

もう一度呟いて、静雄は大きく息を吐き出した。
一度目をきつく瞑って、今度は息を大きく吸って。
覚悟を決めて、視線を前に向ける。
足はゆっくり踏みしめるように。しかし、決して止まらずに。
自動ドアをくぐった静雄は、押し慣れた部屋番号を押す。
そして、返事もなくすぐ開いた自動ドアに、数回瞬いた。

「…あの野郎、気付いてやがったのかよ」

マンションの前でずっと考えていた自分を見下ろしていたのだろうか。そう思うと腹が立つが、いや今は喧嘩してる場合じゃねぇと首を振って。
静雄は気を静めるためにあえてゆっくりとエレベーターに向かった。


***


「やあ、シズちゃん」
出迎える男に、普段と変わったところはないように見える。
だが、視線をわずかに逸らして、まっすぐ見てこない辺り、まだ臨也の機嫌は直っていないのかもしれない。
そう考えた静雄は、とりあえず相手を刺激しないように慎重に…は無理なので、無難な言葉を選ぶ。

「あー…元気だったか」

否。全然無難じゃなかった。
そう思って自分の語彙の少なさに歯噛みした。
ぷっと小さく笑われてついつい睨みつけてしまう静雄だったが。

「…君、本当に馬鹿だよねぇ」

続く呆れたような、からかうような、そんな響きの声には怒らなかった。
なぜなら。
臨也が声とは真逆の、柔らかな苦笑を浮かべていたからだった。












※静雄さんと臨也さん。