カウントダウン 6
※2010年クリスマス企画。来神時代。











「…なぁ、何してんだ?」
思わず天敵にそう問いかけてしまうほど。
その光景は(ある意味)異様だった。
「何って見れば分かるだろ」
それとも分からないほど馬鹿なのかい。
そう言った臨也が手に持つのは、編み針だ。ついでに机に転がるのは毛糸。
いや、それは分かるんだけどな。でも、やっぱり分からないわけで、と思う静雄は悪くないはずだ。
臨也と編み物。どんな取り合わせだと言いたくなるところに、さらに場所は教室ときて。
さすがの静雄もその異常さに思わず声を掛けてしまったわけだ。

「…何でこんなとこでそんなもんやってるんだよ」
「罰ゲームだよ」

静雄のその問いかけに答えたのは、当の本人ではなく新羅だった。
いつの間にかやって来たらしい新羅は、臨也の編んでいるマフラーと思しきものを指差して言う。

「この前ちょっとした賭けをしてさ」
「それで今この状況なんだよ。なにシズちゃん?そんなに俺が編み物してるのが変だって言うの?」

じろりと睨まれて、いやそうじゃねぇけどな、と首を振って。
静雄は思ったことを口にした。

「手前と編み物って似合わねぇと思っただけだ」
「へぇ…そんなこと言うんだ」
「?」

ふふっと暗い笑みを浮かべる臨也に首を傾げる。

「ああ、そのマフラー君のだよ静雄くん」
「は?」

何かとんでもない台詞を聞いた気がする。
新羅と臨也とマフラーと。
何度か視線を往復させて、静雄はさらに首を傾げた。
聞いた台詞の意味をいまいち理解できないまま、臨也に向かって問う。

「なあ…今の、新羅の嘘だよな?」

答えは重い沈黙だった。

「おい、臨也…」
「……」
「おい」
「………」
「おいノミ蟲」
「煩い。本当だよ。嘘じゃない。俺は。罰ゲームで。このマフラーを。シズちゃんへのクリスマスプレゼントとして編んでるんだ」
「…………嘘だろ」

編みかけのマフラーと臨也を交互にマジマジと見て。
静雄は何の冗談なんだと新羅を見る。
が、新羅はまったく気にした様子もなく、良かったね静雄!可愛い恋人からの手作りのプレゼントだよ!とか抜かしている。

「……手前プレゼントやらないって言ってただろうが」
「言ってたよ。これは罰ゲームで仕方なく作ってるの。もちろん使わなくていいからね」
「…………」

いや、そうはいうけどな。と静雄は困って視線を天井へと向けた。
天敵だがどういうわけか恋人でもある臨也からの、クリスマスプレゼント。
もらえないと信じていただけに、予想外すぎて喜ぶこともできやしない。

「あー…無理すんなよ」
「お生憎さま。俺は器用だからこれくらいなんてことないんです」
「…そうじゃなくてだな」

ああもういいか。作ってくれるというのなら、作ってもらおうじゃないか。
そう考えて、臨也の勘違いを訂正することを止めた静雄に。
臨也はさらに言葉を続けた。

「これ、手袋もあるんだよね。そっちはもう出来てるんだけどさ。罰ゲームだから学校で受け取ってもらうところまでは付き合ってよ?使う必要はないから」

その言葉に、むしろ絶対に使うだろう自分を想像して。
静雄は、まあ臨也への軽い嫌がらせくらいにはなるしな、と意味もなく自分に対する言い訳を考えたのだった。












※6日前。