カウントダウン 10
※2010年クリスマス企画。『猛獣』設定。











さみぃ、と呟いた幼馴染に。
臨也はのんびりした口調で冬だからねと返す。
もうあと残り半月で今年も終わりだ。
いや充実した一年だったと思い、隣で寒い寒いと繰り返す静雄を見る。
静雄は寒がりだ。新羅は筋肉の萎縮がどうとかと言っていたが、まあ臨也的にはただの寒がりで十分だった。

「今日は鍋にしようか」
「あー…あったまりそうだな…」
「何がいい?」
「……任せる」

わずかに考えて、臨也が作るなら失敗はないだろうと『おまかせ』を選択する静雄に、臨也はくすくすと笑った。
冬の静雄はいつもより大人しい。
帰宅途中の臨也を見かけても追いかけない程度には、だが。

「じゃあ材料買って帰りたいんだけど」
「…分かった」

明らかに不承不承という感じの声音。
早く暖かい家に帰りたいのだろうとは思うが、帰り際に出会ったのが運の尽きだ。諦めてもらおう。

「いや、シズちゃんに会えてよかったよ。俺じゃ買って帰れる量が全然違うしさ」
「………」

そう言えば、静雄は仕方ないなと溜息をつく。
シズちゃんは単純でいい、と臨也が思ったことにはたぶん気がついていないのだろう。
と、静雄が急に臨也に向かって手を伸ばしてきた。
何だと思うが黙って見ていれば、ポケットに突っ込んでいた手を取られる。
冷たい外気にさらされたそれは、寒いと感じるより先に静雄の大きな手にくるまれ、握られた。

「ええ、と…シズちゃん?」
「うるせぇ黙れ喋るな。…さみぃんだよ」

そう言って視線を逸らす静雄。
確かに、繋がれた手は冷えきっている。
だが、
「…男同士で手を繋ぐのは、ちょっと恥ずかしくない?」
俺は恥ずかしいんだけどと言ってみるが、無視された。
「………」
「………」
離さない手は、少しずつ臨也の体温が移って暖かくなり始めている。
その手と、静雄の顔と、寒そうな首筋を見て。
臨也は、まあいいか、と音にせず呟く。
そして、今年のクリスマスは、新しいマフラーと手袋でも贈るかなと考えて。
臨也は寒がりの幼馴染の手を握り返して、ゆっくり歩き出した。












※10日前。