1月1日
※2011年元旦。『猛獣』設定。











ん、と小さく伸びをして。
臨也はすっかり明るくなった窓越しの空を見上げた。

1月1日。午前8時。

いい加減静雄を起こそうかと考えて、まあいいかと思い直す。
昨日は――というか今日だが――ずいぶん遅くまで起きていたことだしと考えて、臨也はコーヒーでも淹れるかなと立ち上がった。

「…しかし、師匠もこんな朝っぱらから仕事の依頼はないよねぇ」

基本年中無休に近い仕事だが、それでも元旦から仕事を頼まれるとは思っていなかった。
昨年から引き続きのものは別として、少なくとも正月早々仕事をする気は臨也にはなかったのだ。
だというのに、弟子の都合などお構いなしの師は急ぎだと仕事を割り込ませてくれる。…一応、休みなのに悪いなと謝ってはいたが。
「ま、仕方ないか」
それほど難しい案件でもないし、すぐに片付くだろう。
そう楽観的に考えて、臨也はいつも通りの手順でゆっくりとコーヒーを淹れ始めた。






淹れたコーヒーを飲みながらのんびりと情報の整理をしていた臨也は、背後の気配に気付いて顔を上げた。

「シズちゃん、おはよ」
「…おー」

ふあぁと大きな欠伸。
まだ眠そうに目をこする静雄に、臨也はコーヒーでも飲むかい?と口にする。
「あー…もらう」
「了解」
ちょっと待っててと立ち上がろうとした臨也に、しかし静雄は「あ」と声を上げて手を伸ばした。
そのまま腕を掴まれて静止させられ、臨也は首を捻る。

「どうかした?」
問うと、静雄は「寝る前に言ったけどよ」と前置きして。
「あけましておめでとう」
と言った。
相変わらず、何というか律儀な男だ。
つられて同じ言葉を返して、臨也は小さく苦笑した。

「今年もよろしく」
「おう。よろしくされてやるよ」

だいぶ意識が覚醒してきたのか。手前の相手が俺以外に勤まるわけねぇしななんてににやりと口元を吊り上げて言われて。
臨也はじゃあそういうことにしておいてあげるよとわざとらしく溜息をついて応じる。

「今年もいろんなこと、一緒にしようね」
「…厄介事はごめんだぞ」

余計な一言を言った幼馴染に、臨也はむうと頬を膨らませた。
そりゃあ今年も悪巧みを止めようなんて気はさらさらないが、一年の初めから牽制されるとはと不満気に睨む。
「シズちゃんのばーか」
「…手前なぁ」
仕方ない奴だとばかりに静雄が苦笑する。
ほどほどにしとけよ、と呟いて、
「今年もよろしくな」
と、くしゃりと臨也の頭を撫でた彼に、臨也はもちろんと返事をした。
そして。
どちらからともなく近づいて、こつりと額を合わせて。
二人で笑いあったのだった。












※今年もよろしくお願いします!